日本人はノリ(海苔)が大好きで、全国で毎年約100 億枚前後のノリが生産・消費されています。一人あたりにすると、1 年間に100 枚くらい食べていることになります。ノリの養殖は江戸時代の終わりごろから始まったとされていますが、その当時はほとんど自然まかせの、かなり効率の悪いものでした。現在では、ノリの一生(生活史)に基づいた養殖の方法がきちんと確立され、効率のよいノリ生産がおこなわれるようになりました。

ノリの一生(生活史)はどうなっているか?
 私たちがノリといっている体は、秋から冬の間によく成長し、春には枯れてなくなるのが普通です。では夏の間はどうしているのでしょうか。実は全然別な体で思いもかけない場所で夏を越します。その場所というのは貝殻の中で、体は細い糸状です。この糸状の体は貝殻のなかで成長し、秋ごろ成熟して胞子を作ります。この秋に出される胞子が網などにくっついて成長するとノリの体になるのです。

現在の養殖のやりかたは?
 川から栄養分がたっぷり運ばれてくる内湾域で、おもにノリの養殖はおこなわれています。夏の間、漁師さんは糸状体(「コンコセリス糸状体」と普通よびます)をカキ殻の中でたくさん育てます。この糸状体に胞子ができてくるころ、海に張った網に、コンコセリス糸状体が育ったカキ殻を吊るして、胞子をくっつかせるのです。こうすることで、ノリ網にはたくさんのノリの体が成長してくるわけです。


作成者 川口栄男  かわぐちしげお (農学研究院動物資源科学部門)    
高口由紀子 こうぐちゆきこ (生物資源環境科学府動物資源科学専攻)